【I to U $CREAMing!! 5周年記念インタビュー】



哀原ななと有未りんによるアイドルユニット「I to U $CREAMing!!」(通称:アユスク) は、メンバー2人によるセルフプロデュースで、都内を中心に活動している。こだわりの楽曲とメンバー自身の作詞による歌詞、練り込まれた世界観のライブパフォーマンスなどで、2018年の結成からじわじわと人気を広げ、2023年は2大アイドルフェスのひとつである「@JAM EXPO」への出場も決まった。9月1日(金)には代官山UNITで結成5周年のワンマンライブも控えている。

すでに一部の界隈では話題になっているが、より広い層に「発見される」のも時間の問題かもしれない。しかし現時点では、彼女たちの情報はまだ表にあまり出ていない。そこで、哀原ななと有未りんにインタビューを行い、ユニット結成の経緯や2人の背景・キャラクターなどの基本情報、楽曲の作り方や作詞で大切にしていること、さらには「ROAD TO @JAM EXPO 2023」の振り返りや5周年ワンマンに向けた思い、その先の目標など、幅広く話を聞いた。


取材・文 山田宗太朗




長い付き合いの2人が、今度こそ完全燃焼しようと、理想のアイドルを目指す

ーーまずは、グループ結成に至った経緯、2人の出会いから教えてください。


りん:知り合ったのは何年も前のことで、友達期間は長いんです。

過去には一緒にアイドルをやっていたこともあって、その活動が終わって普通に生活していたんですが、数年ぶりにななさんと会う機会があったんです。

 

なな:お互いに忙しくて会わない期間が続いてたけれど、久しぶりにりんさんの誕生日をお祝いする機会があったんです。その日は普通にごはんを食べて、その後も別の日に何度かごはんを食べに行ったりする中で、どちらともなく「アイドルはもうやらないの?」という話になって。その時、2人ともアイドルでやり残したことがあるというか、完全燃焼できなかった思いがあることがわかって。

 

りん:2人とも意見が合ったから、「てことは……? やってみる? やっちゃう?」みたいな感じで話が膨らんでいきました。

 

ーーアイドル活動を再開する際、他の相手と組むことは考えましたか?

 

なな:もちろん、どこかのグループに入ることも考えました。ただ、大人数のグループは過去に経験していて大変なのを知っていたし、2人でやるのが早いと思って。

 

りん:やっぱり長い付き合いなので、大体のことは分かる……っていう言い方は違うかもしれないけれど、新しい人と組むよりは良いのかなと思って。実は、ななさんとは高校も同じだったんです。だからお互いのことをかなり知り尽くしていて。

 

ーーアイドル経験者で、学生時代から友達で、よく知った相手だからこそ組んだと。そもそもアイドルになろうと思ったのはなぜなんですか?

 

なな:わたしは小さい頃、モーニング娘。の石川梨華ちゃんが大好きだったんです。かわいくて、あんなふうになりたいなって。振り返ってみれば、人前で歌うということのが好きだったのかもしれません。初めて自分で応募したオーディションはAKB48さんで、最終審査で落ちたことが悔しくて他のオーディションを探すようになり、母が見つけてくれたグループ、つまりりんさんと同じグループに入りました。


卒業後しばらくして、アイドルを続けているまわりの子たちの輝く姿を見ていたら、もっとやりたかったなと思うようになって。眠っていても夢に見てしまうくらい、アイドルをやりたいんだと気付いたんです。そうしてまたグループを探すんですが、自分に合いそうなグループが見つからなかったんです。その頃は、所謂「楽曲派」みたいなアイドルさんが多くて。わたしは正統派アイドルが好きで、歌えて踊れてかわいいキラキラした人たちになりたかったので、ちょっと違うなと思ったんですね。


ーーなるほど。アイドルを卒業してからの時間は、ななさんにとって、「本当に自分に必要なのはこれだ」と確信するために必要な期間だったんですね。りんさんはどうですか?


りん:わたしは小学生の頃に地元のダンススクールに通い始め、もっと本格的に習いたくなり3.4年生頃にはエイベックス・アーティストアカデミーに入り、ダンス&ボーカルを習っていました。TRFさんのツアーで1曲だけバックダンサーとして参加したこともあります。そのまま続けたかったけれど、6年生の時に家庭の事情でアカデミーをやめることになるんです。でも、歌ったり踊ったりすることは続けたくて、親が見つけてくれたアイドルグループのオーディションを受けて、たまたまアイドル活動を始めることになりました。その活動は高校3年生まで続けるんですが、わたしが本格的にアイドルに出会ったのは中学2年の時なんです。


ーーえ、どういうことですか? その頃、りんさんはもうアイドルだったのでは?


りん:わたしはテレビを見たり、音楽を聴いたりする機会のない家庭環境で育ったんです。だから当時アカデミーで触れる音楽しか知らなくて。中2の時にファンの方がくれたスマイレージさんのCDを聴いたことがきっかけでアイドルに興味を持ち始めました。中3になると家庭環境が変わって、やっとテレビを見たりインターネットを通じて自ら様々な文化に触れられるようになり、ハロプロの他のグループさんやAKB48さんを知って本格的にアイドルを好きになるんです。だからわたしの場合、後からアイドルが好きになったんですね。


ーーかなり珍しいパターンですよね。先にアイドルになって、後から好きになるという。

 

りん:特にハロプロさんのクオリティの高さに驚いちゃって。自分もアイドルとして活動していたからより凄さがわかったんですよね。そうしていろいろなアイドルさんを知っていくうちに自分のやりたい理想像が出来上がっていき、元々居たグループを卒業し、自分が本当にやりたいアイドル活動をしたいなという気持ちがずっとあったんです。でも現実的に色々と整わなくてできないまま、数年空いてしまって。そんな時にななさんと再会して、ようやくやれることになって現在に至る、という流れです。

 


対照的な2人であっと言わせる

ーーオフィシャルサイトによると、グループのコンセプトは「わたしとあなたであっと言わせたい。」ということですが、それがそのままグループ名「I to U $CREAMing!!」になったんですか。


なな:そうですね。グループ名はなかなか決まらなくて、お互いの好きな食べ物から「肉と芋」なんていうアイデアも出たりしているうち(笑)、「Screaming」という言葉にたどり着いて。「あっと言わせる」というような意味があるので、良いんじゃないかなと。そこに「わたしとあなた」に加えて、お互いの名前から「I」と「U」を持ってきました。


ーー「Screaming」の「S」が「$」なのは?


なな:「Screaming」だとしっくりこない気がしたんです。「!!」を最後につけたから、もはやあんまり感じないかもしれないけれど、全体的に「直線がない」と感じて。だから飾りとしてあってもいいかなと思ったんですよ。「ing」が小文字なのは「徐々に成長していこうね」という思いを込めて、現在進行形であることを強調したい気持ちがありました。それに「$CREAMING」だとあまりかわいくないし「to」が小文字なので、バランスを取りたかったという理由もあります。びっくりマークが2つなのは2人組だからです。


ーーオフィシャルサイトには「対照的な2人が生み出すリシズムなアイドルユニット」という文言もあります。


なな:わたしたちは見た目や性格が全然違うんですよね。普通に学校にいたら、絶対に仲良くはならないんで。


りん:って、いつも言ってくるんです(笑)。


なな:絶対に関わりたくないタイプなんで。


ーーそこまで言いますか(笑)。お互いのこと、どういう性格だと思っていますか?


なな:めちゃめちゃ頑固。


りん:ななさんも頑固。


なな:ただ、りんさんは絶対に折れたくないタイプで。


りん:ななさんも絶対折れたくないタイプ。


なな:ほら、こういうところです(笑)。

 

りん:こういうところです(笑)。絶対言い返してくるみたいな。


ーー対照的というより、似たもの同士なのでは(笑)。


りん:わたしはたぶん、最初はこういう性格じゃなかったんです。以前はもっと優しかった気がします。でもななさんがすごく強いから「わたしももっと言わなきゃ潰される」と思って自分を通すようになって。そうしたら「頑固だね」って言われるようになりました(笑)。


なな:この3~4年でめちゃめちゃ性格変わったよね。自我を持つようになったというか。元々あったものが出てきたんだと思うけど。


ーーななさんは、りんさんのどういうところを見て「学校にいたら絶対に仲良くはならない」と思うんですか?


なな:りんさんは天然なんです。天然な人って苦手で。


りん:ななさんは記憶力もいいし、ちゃんとしてるんですよね。わたしもちゃんとしたい、真面目にやりたいと思ってるし、実際に真剣なんですけど、ちょいちょい抜けちゃうんですよね。


ーーA型とO型の違いみたいなものですか?


なな:まさにそれですね。他に対照的な部分は、金髪と黒髪、低身長と高身長という見た目。声質もわたしはちょっと特徴的な声で、りんさんはマイルドな声。


ーー「リリシズムな」というのは?


りん:「叙情的な」という意味なんですけど、すべての楽曲の歌詞を自分たちで書いていて、作品に込めた気持ちを大切にしているんです。


ーー歌詞を自分たちで書くのはなぜですか?


なな:最初はお金がかかるからという理由だったけど、やっぱり自分たちで歌詞を書いた方が感情移入もできるし、制作意図がわかるから歌いやすいと気付いて。もちろん外注したほうがラクだと思う時もあるし、自分たちだけで作っていると同じようなワードを使っちゃったりもするから他の人に頼みたい気持ちもあるけれど、なならしさ、りんらしさみたいな歌詞をファンの方にも気に入ってもらっているので、継続していきたいです。


りん:2人の作品だからこそ、ライブのすべてが 2人の世界観で埋め尽くされてるっていう感じでこの5年やってきたので、そこはかなり大切にしています。


 

冷静なギャンブラー、哀原なな

ーーここからは、それぞれのキャラクターを少し深堀りさせてください。まず、ななさんは競馬が趣味だそうですね。


なな:ハマっているのはここ3年ぐらいです。小さい頃は祖父母の家で過ごすことも多く、おじいちゃんが競馬好きだったので、テレビやラジオではずっと競馬が流れていました。あの頃は「なんで馬が走ってるのが面白いんだろう?」と思っていたけれど、最近思うのは、やっぱり「血」なのかなって。


ーー血(笑)。

 

なな:大人になって宝くじやロトを買えるようになって、当たる楽しさを知っちゃったんです。普通にパチスロも行ったりして、まあ、ジャグラーしか基本は打たないんですけど、当たるとやっぱり楽しいんですよね。それで2020年の有馬記念の時、家族で馬券を買いに行きまして。当たりはしなかったけれど、8,000円ぐらい買って1万円程返ってきたのが、沼への入り口でした。換金には行けなかったですけど(笑)ただ、ハマった時期がコロナ禍なので、規制もあったりして競馬場には行けていないので、どこかで時間を見つけて行きたいです。


ーー好きな馬とかいるんですか?


なな:現役だと、人気馬だけどデアリングタクトが好きです。ただ最近全然当たらないというか、来れない子なので頑張ってほしい。


ーー特技は「SNSの特定」だそうですが、これはどういうことですか。


なな:ファンの方って別垢を作っている人が多いんですけど、Twitter(X)でもFacebookでもInstagramでも、色々と検索しているとたどり着けちゃうんですよね。


ーーファンの方々の本垢を特定するってことですか?


なな:はい(笑)。昔から友達の別アカウントやちょっとした知り合いのアカウントを探したり、友達から浮気調査みたいなことを頼まれたりしていたので、それで身についたんだと思います。ファンの方のほうが文章の作り方が特徴的だったりするので、友達の彼氏の浮気相手よりは特定しやすいです。

 

ーーそういうのって、好きな人多いかもしれないですね。推しが自分のことを探してくれているのって嬉しいだろうし。YouTubeの質問コーナー(【実写編】アユラヂ#30「30の質問」)で、「自分の嫌いなところは?」という質問に「全部」と答えていましたが、自分のことが嫌いなんですか?

 

なな:そうなんです。「今日、かわいいかも!」と思っても、電車の窓越しに見たら「え、全然じゃん……」と思ってしまう。角度を変えたら全然かわいく見えなくなるんです。中身も、なりたい自分に全然近付けなくて。


ーーそれは、もしかしたら長所かもしれませんね。客観的・多角的に自分を見られているのも、なりたい自分がはっきりあることも、それに向けて頑張っているのも、全部魅力だと思います。それから、「嫌いなものは?」という質問には「この世の……すべての敵……」と答えていました。……敵?


なな:……え? でも信じられるのは自分だけなんですよ。自分以外は信じられないし、たまに自分も信じられないみたいな。「なんでこんなに自分は何もできないんだろう」と思うことってないですか? でも結局は「自分は自分しかいないから、周りにどう言われようと信念を曲げたくない」と思う頑固さもあって、そんな自分も嫌ですけど、そういう嫌なところと折り合いをつけながら生きてます。


ーー好きなところは?


なな:いや、もうないぐらい。あまり思い浮かばないです。


ーーりんさんが好きな、ななさんの良いところって何ですか?


りん:えっ!? うーんと……。


なな:ないんだ(笑)。


りん:こうやって言われると言えなくなっちゃうしわかんなくなっちゃうけど、まずは、向上心があるところ。向上心がないとグループはやっていけないし。あとは常に冷静なところ。


なな:まあ、基本は冷静でいたい。


りん:でも面白いことは好きだよね? よく笑うし。


ーー昔はステージであまり笑わなかったと、ファンの方がどこかでコメントしていた気がします。


なな:笑わなかったというより、アユスクにはシリアスな曲が多いので、笑うところがないと思っていたんです。でも最近、笑ったほうがみんな喜ぶんだなと気付いて。笑うと「今日、表情がとても良かった」と言われることが多いので、笑ったほうがいいのかなと思うようになりました。


 

二面性のある天然女子、有未りん

ーー次はりんさんについて。趣味のひとつに「物件、建物を観察すること」がありますが、これはどういうことですか? 


りん:え、そこですか(笑)!? でも結構みんな、不動産サイトとか見るの好きじゃないですか? 「ここに住んでみたいな」とか「こういう建物に住んだらどういう生活なのかな」とか、そういうことを想像するのが好きで、サイトを見たり、街中を歩いている時に建物を見たり、YouTubeで物件チャンネルやルームツアーを見たりするのが楽しいんです。元々、あんまり良い家には住んでいなかったので、きれいな家に憧れがあるんです。


ーー子どもの頃の影響ですか。


りん:だと思います。その頃にできた価値観にかなり引っ張られていて、抜きたいけどなかなか抜けないんですよね。ちょっと重く聞こえるかもしれないけれど、愛情に飢えていたり、自分を好きになれなかったり、自分は幸せになっちゃだめだと思っていたり。


ーー幸せになっちゃだめ?


りん:何かがうまくいっていたり調子が良かったりする時、そんな自分に嫌悪感を抱いてしまうというか。「こんなのわたしじゃない」と思ってしまうんです。


ーーりんさんって、どんな子どもだったんですか?


りん:子どもの頃は、全然自我がなかったんです。家庭でもアイドルグループでも「ああしなさい、こうしなさい」って常に正されて、自我が生まれる機会を消されてたというか。そういうのが重なって、ぎゅっと潰された人間みたいになっていたと思います。それをリアルに感じ始めたのは20歳前後くらいからで、バイトをしたり一般的な大人や自分と近い年齢の人たちと関わった時に、自分と似ている人がいないし、馴染めないし、自分ってなんか変だなと。それでどんどん塞ぎ込んでしまった時期もありました。それが少しずつ雪解けしていったのは、たぶん、アユスクを始めて少し経った頃からだと思います。


ーーということは、アユスクの活動に救われているところがありますか。


りん: かなり! かなり救われています。


ーーそういうのが『SOAK』などの切実な歌詞に反映されているんですね。


りん:そうなのかもしれないです……。ただ、アイドルをやる以上、そういう闇みたいな部分は嫌がる方も多いので、必要以上に出さないように気を付けてはいます。それに、無意識に普通のふりをして仮面を被って生きてきた期間が長かったので、本来の自分を隠すことが癖になっちゃってるし。特に自分自身の発信が苦手なので、克服したいと常に思っています。


ーーでも二面性って魅力だと思います。


りん:面白がっていただけるならありがたいです……!



音楽的ルーツについて

ーーこれまでどういう音楽に影響を受けてきましたか?


りん:わたしはそれこそ、エイベックス関連の曲が最初で、大塚愛さん、倖田來未さん、浜崎あゆみさんの曲等を中心にボーカルレッスンをきっかけに知り、その後ハロプロさんに出会いアイドル曲を好きになりました。あとは、バイトでバンド系メインのイベントスタッフをしていたこともあるので、夏フェスに出ている邦ロックをたくさん聴いた時期もありました。基本はアイドルさんの音楽に影響を受けていると思います。


なな:わたしは初めて自分で買ったCDが久住小春さんの『バラライカ』(月島きらり starring 久住小春(モーニング娘。))で、それからいろいろなCDを買うようになりました。ジャケ買いとかもしてたんですけど、限られたお小遣いの中で買わなければいけないから、地元のタワレコでめちゃめちゃ視聴していました。中高生の頃からいろんなジャンルを聴いていたと思います。ただ、洋楽にはあまりハマらなかったですね。言葉がわからないので(笑)。


やっぱり『バラライカ』から始まっているのでアイドルがメインにはありつつ、バンドサウンドも好きで、THE BACK HORNとか9mm Parabellum Bulletとか好きでした。それと、小学生の頃からずっとUVERworldが好きで、人生の半分くらいUVERと過ごしてるみたいな感じです。あとはアニソンも多いですね。アニメの主題歌は「今、売り出したいアーティスト」が担当するので、それきっかけでいろんなアーティストを知って、という感じですね。


ーーV系はどうですか?


なな:あ、割と聴いてはいます。MIYAVIさん(当時は雅-miyavi-名義)の最初のソロアルバムとかは買いましたね。逆にX JAPANやLUNA SEAは通っていないので全然知らないんです。ファンの方には「◯◯(バンド名)っぽい曲があるね」みたいなことはよく言われるんですけど。V系って、メロのラインが歌謡曲っぽかったりもするじゃないですか。そういうのが似ているのかな。アユスクのファンにはそっちから来た方も多いです。

 

ーー作曲は外部の方に頼んでいますが、どんなふうに発注するんでしょうか? お任せなのか、コンセプトを伝えているのか。


なな:ほとんどの場合、こちらでコンセプトを決めてから「こういう曲がほしいです」とお願いをしています。


りん:コンセプトは常に探しています。いくつか2人で候補を出して、その中で、今回はこれにしようと決めて、その段階でどっちが作詞するかも決めます。作詞担当になったほうが「こういうモチーフで、こういう気持ちの曲で」と細部を固めて、それから作曲をお願いしていますね。


ーーお互いの歌詞についてはどう思っていますか?


なな:わたしは世界観を重視しちゃうので、りんさんの歌詞は自分には書けないと思っています。りんさんの歌詞って、裏に隠された色々があったりもするけれど、直球といえば直球じゃないですか。だから耳馴染みも良いし、すごいなと思うことが多いです。


りん:ななさんの歌詞は、わたしが絶対に使わないであろうワードがあるのでいつも驚いています。「こんなこと歌うんだ……!」って。「麻薬」と書いて「ドラッグ」なんて(『Devil’s trumpet.』)、たとえ歌詞であっても、わたしには思いつかない。


ーーお互いに、自分では書けない歌詞だと思っているんですね。どんなところからインスピレーションを得て、どうやって作詞するのでしょうか?


りん:曲によるけれど、わたしの場合、テーマを決めてから世界観を作り、主人公を考えてお話を作って、入れたいワードをはめ込んで文字数を調節したり韻を踏んだりして作っています。たとえば『butterfly』の時は、「射止めたい」というテーマでかわいらしい曲にしたかったんです。それで「弓矢」とか「天使」とか「キューピッド」というモチーフが思い浮かんで、そこから「弓」「撃ち抜く」「飛ぶ」と考えているうちに、蝶と結びつくなと思って。


ーーなるほど。


りん:「バタフライ」という言葉がサビのメロディーと音数ぴったりでフックになるし、そうやってサビが決まって、そこからストーリーの流れを作って、自分の経験も盛り込んで……という感じでした。逆に『float』は、これは特殊なパターンですけど、テーマを決めずに作曲を依頼して、できあがった曲を何度も聴いているうちに「クリームソーダが合うかも?」と感じて、そこからお話を作っていきました。


ーーストーリーを作るんですね。ななさんの場合はどうでしょう?


なな:わたしの場合は、まず無印良品で買った4コマノートに展開を書くんです。たとえば『Boronia』は、女の子同士の恋愛を描いた漫画にインスピレーションを受けて書いたんですけど、4コマノートに「この2人は結ばれない、でも自分のことは好きになってほしい、ただ、実際に振り向かれると引いちゃう」みたいな展開を書いていました。


ーーなるほど、そういうコンセプトで作曲も依頼しているから、ああいった歌割りになったり、ツインギターの絡みが印象的な曲になるんですね。


なな:そうですね。それから「禁断の愛っていうと何のワードがあるかな?」と考えながら、同じようなテーマの映画を見るんです。そうして「主人公はこの場面ではこういう心情だから、こんなふうに思ってるんだろうな」みたいに考えて書き出して、「ということは、こういうワードだな」と言葉を拾っていくんです。なので、映画や漫画などの作品から引っ張ってくることが多いですね。りんさんは音楽からインスピレーションを受けることが多いでしょ?


りん:うん、わたしは音楽が多いかも。作りたい曲に近いイメージの曲をいっぱい聴いて、そこから考えていく。


なな:わたしの場合は曲を聴くと、影響されちゃって同じようなものになっちゃうから。「あの曲の歌詞から持ってきたな」ってバレるのも嫌なんです。


 

@JAM初出場から5周年ワンマンへ。ターニングポイントの一年

ーーさて、8月に横浜アリーナで行われる「@JAM EXPO 2023」の出演をかけて、アユスクはその前哨戦となる「ROAD TO @JAM EXPO 2023」で予選・決勝を勝ち抜き、見事、本戦への出場権を獲得しました。「@JAM」に出るのはこれが初めてですが、そもそもこのイベントに出ようと思ったのはなぜですか?


りん:以前からそういったオーディションイベントのオファーはあったし、チャンスを掴めるなら出たい気持ちもあったんですけど、「配信による獲得ポイント上位のグループが出場決定」みたいなルールが多くて疑問だったんです。結果的に今回も配信ポイントはあったけれど、ライブで審査してもらえる部分が大きくて、それが理由のひとつでした。決勝までたった数ヶ月間だったけど、ここまでめっちゃ長かった……。


ーー長かった?


りん:何がなんでも勝たなければいけない使命感があって、それに向かってすべきことを考える時間がすごく長かったんです。とにかくずっと考えていました。アユスクを結成してからいちばん忙しい数ヶ月間だった気がします。


ーー勝因は何だと分析していますか?


なな:勝つためのポイントをおさえていたことと、それをファンの方たちが理解して行動してくれたことだと思います。


ーー具体的にはどんなことですか?


りん:たとえば、「決勝戦ではこの配信の視聴人数がかなり重要だから、ぜひ見てほしい」ということを、みんなが嫌にならないような言い方で何度も伝えたり、といったことです。とにかく勝つことにとことん向き合いました。


それから、アユスクはライブの盛り上がりに関してずっとコンプレックスがあったんです。わたしたちは世界観を大切にしているので、フロアが盛り上がるようなライブはあまりやってこなかったけれど、「@JAM」のような大型イベントに出るならそれはマイナスになってしまう。だからそのあたりをどうにかみんなで変えていきたい、とめちゃくちゃアピールしました。


そうしたら、1回目の予選会で、ライブが過去イチ盛り上がったんです。「こんなライブ、うちらにもできるんだ!」と思うくらいに。そんなふうに、盛り上がるフロアを作るための努力やお客さんの煽り方、決勝戦の会場だったZepp DiverCity(TOKYO)のような広いステージでの動き方・見せ方なども研究して、ライブへの向き合い方を変えました。


ーー「@JAM EXPO 2023」が開催される横浜アリーナは、過去いちばん大きな会場ですよね。


なな:そうなんですけど、横アリと言ってもメインステージではなく、通路に用意されたステージなんです。


ーー通路? それは、かなりやりにくいのでは……。


りん:そうかもしれないです。ただ、大きなイベントだから人はたくさんいるし、移動するついでに見てもらうこともできるし、多くの人に見てもらえるチャンスであることは変わらないですよね。「@JAMに出られるグループ」というイメージにもなるので、出るだけで価値があると思っています。


ーー「@JAM EXPO 2023」では何を残したいですか?


りん:「@JAM」に関しては、予選から決勝まで勝ち上がれたファンの方々とのストーリーがいちばん重要だと思っているんです。アユスクはここで大きく成長できたと思っていて、ずっと低空飛行だったのがポンとひとつ上に行けた感じで。だからまずはその感謝をみなさんに伝えたいですね。


なな:その上で、新しく多くの人に知ってもらえたらと思っています。


ーーその後、9月1日には代官山UNITで5周年記念ワンマンライブですね。


なな:そうですね。実は、今年の「@JAM」に出たかったのは、その後に5周年ワンマンを控えていることも理由のひとつなんです。周年に向けた道筋を作りたかったんですね。今年は間違いなくアユスクにとってのターニングポイントになったし、9月1日に初めてわたしたちのワンマンを見る人もいると思うので、そういう人に「すごいところを推してたんだ」と思ってもらえるようにしたいと思っています。


りん:この1年ですごく成長できたと思っているからこそ、見てもらいたい気持ちが強いです。これだけ大きくなったよっていうのをとにかく見てもらいたい、見てもらわないと始まらないと思ってます!


ーーでは最後に、そんなターニングポイントになった2023年の後半に向けて、意気込みをお願いします。


りん:この一年で、「こういう方にもアユスクを見てほしかった!」という方々にもちょっとずつ手が届くようになってきました。でもまだ安定していないし、悔しいけどまだまだ私たちを知らない方がたくさんいると実感する機会も多いから、グループとしては今よりもっとアユスクが好きだと言ってもらえるように活動や広報を頑張っていきたいです。個人としては、アイドル・タレントしてとしての魅力をまだまだ作りきれていないし、それを表に出すことも苦手なので、そこは引き続き追求していきたいです。


なな:今年に入ってから時間が経つスピードがめちゃめちゃ早いので、「半年後こうしたいです」と思っても、そのスピードについていけるのかという不安があります。でも、まずはアユスクの活動を自分がいちばん楽しめるように頑張って、ファンの方たちがついて来てくれるような良いライブをして、アユスクが目指している未来の像をみんなと共有できるように、ひとつずつ目標を立てて頑張りたいと思っています。


2023.09.01(金)
I to U $CREAMing!! 5th Anniversary ONE-MAN「mystique」

会場:代官山UNIT
時間:開場18:00/開演19:00
料金:A ¥3,000 / B ¥8,000(撮影可能席)

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